TEMPEST under the ground



原曲 : 「東方地霊殿」 より 「廃獄ララバイ」  「死体旅行」 「業火マントル」
作曲 : ZUN ( 上海アリス幻樂団 )
アレンジ : chiquchoo ( Presence∝fTVA )
 



(本来はこの部分より、楽譜と音源にアクセスできます。)



●どんな曲?

 再帰型の構成重視曲として一つの最終形態に達したと言って、そんなに間違っていない楽曲です。ベートーベンのソナタ17番、通称テンペストの最終第3楽章を下敷きとし、そこに東方地霊殿の3曲を載せて徹底的に再帰で聞かせます。間違いなく今後もこれを超える構成重視曲は出ないだろうと言える構成で、SP5最後の大ボスにこれ以上相応しい曲はありません。


●構成分析(簡易版)

前奏 - A - B - A - 展開部(A・B・他) - C - D' - A - B - E - D - C - (B‐展) - A - Coda(A)

開始小節(音源該当部)ブロック区間主題記号原曲
10:00前半0 (前奏)廃獄ララバイ
50:031A
400:382B
570:543A
921:294(展開部)A・B・他廃獄ララバイ・死体旅行
1582:325C業火マントル
1763:026D死体旅行
1843:10後半7A廃獄ララバイ
2013:278B
2203:459E死体旅行
2364:0110D
2464:1111C業火マントル
2764:40終盤12B・展開部廃獄ララバイ・死体旅行
3085:1213A廃獄ララバイ
3505:5314(Coda)A



 5旋律、再帰はカウント法にもよりますが厳しく取っても8回以上という、恐るべき複雑さをもった構成です。それぞれの再帰もどれも強い意図を持つ聞き逃せないものです。それがこれだけの段数積んでありますから、最早最後の方は人間の記憶力の限界に迫ってさえきます。実際、クラシックの難解曲と東方アレンジ楽曲を両方聞き慣れた人物でも、最初の1回で全ての構成要素とアレンジ要素を拾うのはほぼ不可能だと思われます。

 まずは大まかな構成を読み取りましょう。前奏からA、Bと出てきて、次のAは5度上のイ短調です。そのままB…と思いきやここから展開部に入ります。この展開部で登場する旋律については後述です。「業火マントル」からのCで盛り上がりがピークとなり、「死体旅行」のD'を緩衝にAに戻ってくるまでが前半です。

 後半はまず、再登場となるA、Bをさらっと通過。「業火マントル」のEを出してきて、原曲そのままの流れでDに繋ぎ、続くCで再度のピークを作ります。しかし今度はここで収まらず、続いてBが再帰、展開部と同形で盛り上がります。最後はAからコーダに繋いでようやく終了です。

 …と、ここまではお馴染みの構成解説ですね。しかし今回はこれだけでは物足りないので、ずぶずぶと深く解説していきたいと思います。


●構成ができるまで

 こんな構成がどうしてできたか…という説明はなかなか大変です。というのも、「魔界極東都市エソテリア」で書きましたが、あの曲で私chiquchooとして初めて、「情報量」を意図的に制御することによる、体系立った構成管理が行われているんですね。どうしてそうなったかというと大体この曲で大変な目にあったせいなんですが、という事はこの曲は、この構成にして体系的な構成組みがなされていないのですね。逆に体系的に組んでいたらここまで充実することもなかったので、良し悪しではありますが。尤も全く管理していなかった訳ではなく、いやむしろ他の人との比較ではこの曲レベルでも相当よく管理されている側に入ると思います。ちゃんと構成設計図とか当時書いてますしね。しかし、にも関わらずこうなったのは、色々な要素がありすぎて、かつそれらが全部するりと入ってしまったという事情が大きいでしょう。

 なかなか驚かれる話なのですが実はこの曲、最初のスタートは4段の変奏型組曲の最終段として設計されました。コンセプトは煉獄ララバイの主題と他の曲との融合。最初の段を原曲基調、2段目~4段目で3段階に、別々の曲と融合しつつ構成を拡大していくアプローチでした。2段目はメイン主題のみ+志○あきこさんの某曲、3段目は原曲全体+某アニメのBGM、そして4段目は原曲を拡張したものとテンペスト第3楽章との組み合わせ、という構図です。3段目までは構成上そんなに大変じゃないので、苦労しそうな4段目から作っていたのですが、結果的にこの4段目が本曲としてオソロシイ完成度で出来上がり、不釣り合いにしかならない3段目以前はほぼ弾ける状態までできていたのにボツになりましたとさ。

 そんなスタートだったので、この曲は変装型組曲の最終段に相応しい程度に構成が充実している必要がありました。あとテンペストのイメージをよく残している必要が。このために、色々な「部品」が用意されます。まずAとBは変装型組曲の原曲要素として出てきていますが、どっちも派手ではないので盛り上がる部分は別旋律が必要です。そこで「業火マントル」のメイン部分を引っ張ってきてCを準備しておきます。ただ、CはA及びBとは直接は馴染まないのでサビ部分まで来ないと出せません。Cに辿り着くまで何らかの「展開部」が必要なのですが、展開部をA・Bの2つの組み合わせだけで引っ張るのは至難なので、第三のピースが欲しい所です。そこで準備されたのがこのフレーズ。

(続きは本編でお楽しみください )